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保育士のポケット > 後輩指導・マネジメント

後輩指導がはじめての中堅保育士へ
信頼される関わり方と、書類が早くなる伝え方

保育の実践に役立つ情報をまとめています / 最終更新: 2026年8月

ある日突然、「今年は後輩を見てね」と言われます。指導のしかたを教わったことは、一度もないのに。

それでも一生懸命に伝えるのに、返事は「はい」だけで、なにも変わらない。書類は締切を過ぎてから出てくる。相談は自分ではなく、別の先輩にしている。だんだん、自分が嫌われているのではないかと思えてくる。

反対に、自分が新人だったころを思い出すこともあります。強い口調で注意されて、内容はまったく頭に入らず、体と心だけがぐったり疲れた。あの思いを後輩にはさせたくない。でも、優しくするだけでは仕事が回らない。その板挟みが、いちばんしんどいところです。

この記事では、①信頼が生まれるコミュニケーションと、②後輩の書類提出が早くなる仕組みの2つに絞ってお伝えします。どちらも、明日から一つずつ試せる形にしました。

はじめに|怒っても伝わらないのは、あなたのせいではない

強い口調で注意されたとき、人の頭の中では「内容を理解する」より先に「身を守る」が起動します。心臓が速くなり、体がこわばり、その場をやり過ごすことに全力を使う。だから、言われた内容は残らず、疲労と「怖い」という記憶だけが残ります。

これは、聞く側の集中力が足りないからではありません。身を守る反応が先に立つと、考える力がうしろに下がるからです。あなたがかつて「怒られても内容が入ってこなかった」のは、当然のことでした。

だから、指導で最初に決めるのはたった一つです。
相手の身を守る反応を起動させないこと。
これができていれば、伝えたい中身は、驚くほどそのまま届きます。

そして、もう一つ知っておいてほしいことがあります。後輩が動かないのは、やる気がないからとは限りません。多くの場合、次の3つのどれかです。

この3つは、すべて指導する側の工夫で減らせます。「やる気がない」で片づけてしまうと、打つ手がなくなってしまいます。

① 信頼が生まれるコミュニケーション

信頼は、指導した量ではなく「味方だ」と感じた回数で育ちます。順番があります。

1できていることを、先に具体的に言う

「がんばってるね」では届きません。見ていないと言えないことを言います。
「さっきAちゃんが泣いたとき、目線を下げてから話しかけてたよね。あれ、すごくよかった」
人は、自分を見ている人の言葉を聞きます。指摘の前に、これが要ります。

2自分の失敗を、先に開示する

「私も1年目のとき、月案の書き方が分からなくて締切を過ぎたことがある」
完璧な先輩には、人は相談できません。失敗した話をしている先輩にだけ、失敗を打ち明けられます。ここが、相談してもらえる関係の入口です。

3指摘は、人前でしない。事実と行動だけ

ほかの職員や子どもの前での指摘は、内容がどれだけ正しくても、恥ずかしさだけが残ります。必ず、二人になれる場所で。
そして「事実」→「起きること」→「してほしい行動」の順に、短く伝えます。人格や態度には触れません。

4「どう思う?」を、指示より先に置く

「次はこうして」の前に、「あの場面、どう感じた?」と聞きます。自分で言葉にしたことは残りますが、言われたことは残りません。
答えが出てこないときは、沈黙を5秒待ちます。先に埋めてしまうと、考える機会を取り上げることになります。

5週に一度、5分でいいから時間を取る

困ったときだけ話す関係だと、話しかけられること自体が「怒られる合図」になってしまいます。何もなくても話す時間を先に決めてしまうと、これが消えます。
聞くことは3つだけ。「今週よかったこと」「困っていること」「私にしてほしいこと」

💡 いちばん効くのは、たぶんこれです
後輩がやったことを、本人のいる場で第三者に伝える。「この壁面、◯◯先生が全部考えたんですよ」。主任や園長に届く形で言えるのは、いまのあなただけです。守ってくれる人だと分かった瞬間に、関係は変わります。

そのまま使える、言い換えの一覧

◆ 動きが遅いと感じたとき
× 「もっと早くできない?」
「この作業、何分くらいかかりそう? 時間が読めると助け合えるから教えて」
◆ 同じことを何度も言うとき
× 「前にも言ったよね」
「私の伝え方が足りなかったかも。もう一度、一緒に確認していい?」
◆ 危ないことがあったとき
× 「何やってるの!」
「今のは、ここに頭をぶつける可能性がある。次は先にマットを敷いてから始めよう」
◆ 報告がなかったとき
× 「なんで言わなかったの」
「言いにくかった? 早く聞けたほうが私も守れるから、迷ったら先に言って」
◆ 書類が雑だと感じたとき
× 「これじゃ出せないよ」
「ここまではこのままでいけるよ。直すのはこの1か所だけ」
◆ 提案を却下したいとき
× 「それは無理」
「その考え方、いいと思う。今年は◯◯の理由で難しいから、この部分だけ取り入れてみない?」
◆ 元気がなさそうなとき
× 「大丈夫?」(「大丈夫です」しか返ってきません)
「最近どう? しんどいところ、一個だけ教えて」
⚠ 言ってはいけないこと
ほかの職員と比べる言葉、人格に触れる言葉、過去を持ち出す言葉。「◯◯さんはできてるのに」「あなたって本当に」「前からそうだよね」。これらは指導ではなく、その人の立場を下げるだけの言葉になります。身体的・精神的な苦痛を与える言動は、職場のハラスメントにあたる場合があります。
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② 後輩の書類提出が早くなる仕組み

「早く出して」と言い続けても、提出は早くなりません。遅れる理由が、やる気ではないからです。次の5つを整えると、目に見えて変わります。

1完成見本を、先に渡す

いちばん効くのがこれです。後輩が固まる最大の理由は「どこまで書けば合格なのか分からない」こと。ゼロから正解を当てにいくのは、誰にとっても難しい作業です。
去年の自分の月案を1枚、そのまま見せてください。「完璧なものじゃなくていい。このくらいで出してね」という基準が伝わるだけで、書き出しの時間が消えます。

2締切を、3つに割る

「25日提出」ではなく、「18日にねらいだけ」「22日に内容まで」「25日に完成」
締切が1つだと、前日に全部やることになります。途中で見せる約束があると、途中でつまずいたことに気づけます。ここで初めて、あなたが手を貸せます。

3書く時間を、勤務時間の中に確保する

「空いた時間に書いてね」は、事実上「持ち帰ってね」と同じ意味になります。時間を確保していないのに提出だけ求めるのは、指導ではなく丸投げです。
午睡の時間、行事のない日の夕方など、週に1回でいいので「書く時間」を先にシフトに書き込みます。ここは主任・園長に相談する価値がある部分です。

4直しは「1か所だけ」にする

赤ペンが5か所入った書類が返ってくると、次から出すのが怖くなります。直すのは、いちばん大事な1か所だけ。残りは次回に回します。
伝え方も順番があります。「ここがよかった」→「直すのはここだけ」→「ここが直ると、こう良くなる」。

5その場メモの習慣を、一緒に始める

書類が遅い人のほとんどは、思い出す作業に時間を使っています。その日のうちに5文字だけメモを残す習慣が身につくと、書く時間そのものが半分になります。
「Aちゃん 積木 高く」「Bくん 靴 自分で」。これで十分です。あなたも一緒にやると続きます。

💡 それでも遅れたとき
理由を責める前に、「どこで止まった?」と聞いてください。書き出しなのか、ねらいの言葉なのか、時間そのものがなかったのか。止まった場所が分かれば、次の手が打てます。「なぜ遅れたの」は理由を探す質問ですが、「どこで止まった」は解決を探す質問です。

提出が遅い人に、最初に渡すもの

言葉で伝えるより、渡してしまうほうが早いものがあります。この3つをそろえてください。

渡すものねらい
去年の完成見本(自分のもの)合格ラインを見せる。完璧でなくていいと伝わる
締切を3つに割った紙(またはメモ)いつ何をどこまで、を一目で分かるようにする
書き出しの型(ねらい→子どもの姿→環境→援助)白紙から始めない。埋める形にする
💡 このサイトの機能も使えます
週案・月案カレンダーで予定を組み立て、AIの添削機能で文章を整える流れは、後輩にもそのまま渡せます。書き方の基本は連絡帳の書き方と例文集にまとめてあります。「これ見てやってみて」と渡せるものがあると、指導の時間そのものが短くなります。

③ 情熱を保ったまま続けるために

技術は教えられますが、「この仕事が好きだ」という気持ちは教えられません。できるのは、その気持ちが消えない環境をつくることだけです。

1. 「なぜそうするのか」を必ずセットで話す

やり方だけを教えると、作業をこなす人になります。
「靴は自分で履かせて」ではなく、「時間はかかるけど、自分でできたっていう経験が、次の挑戦につながるから」。理由を知っている人は、応用ができるようになり、仕事が面白くなります。

2. 子どもの育ちに気づいた瞬間を、一緒に喜ぶ

この仕事の報酬は、給料よりもここにあります。後輩が気づいた変化を、その場で一緒に驚いてください。
「Cくん、今日はじめて自分から入っていったよね」「見てた! うれしかったね」。一人で気づいた喜びより、分かち合った喜びのほうが、ずっと長く残ります。

3. 任せて、口を出さずに待つ

「この活動、丸ごとお願いしていい?」と任せてみてください。心配で口を出したくなりますが、手を出した瞬間に、それは自分の仕事になります。
失敗しても、子どもの安全に関わらないことなら、そのまま経験にしてもらいます。自分で決めた経験の数が、そのまま自信になります。

4. 学ぶ機会を渡す

研修や、ほかのクラスの保育を見る時間。外の空気に触れると、目の前の仕事の意味が見え直します。「行ってきなよ、クラスは見とくから」と言えるのは、あなたです。研修検索から探せます。

後輩が伸びたとき、あなたの手柄にはなりません。
でも、伸びなかったときは、あなたの責任にされることがあります。
それでもこの仕事を引き受けている人へ。その理不尽さを分かったうえで続けていること自体が、もう十分にすごいことです。

④ あなた自身が潰れないために

中堅は、上からも下からも挟まれる立場です。ここを軽く見ていると、指導どころではなくなります。

最後に
あなたが「怒られても内容が入ってこなかった」経験をしているのは、指導する側としての強みです。どうすれば言葉が届かなくなるかを、身をもって知っているということだからです。あのときの自分にかけてほしかった言葉を、そのまま後輩にかけてあげてください。それがいちばん、間違いがありません。
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本記事は現役保育士の実践をもとにした一般的な内容です。園の方針や体制によって適した方法は異なります。
職場で受けている言動に苦痛を感じている場合は、園内の相談窓口や、都道府県の労働局・総合労働相談コーナーに相談できます。

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