リズム遊び10選 かめ・うさぎのねらいとやり方
由来から安全な始め方まで
ピアノが鳴ると、うさぎになって跳んだり、とんぼになって止まったり。リズム遊びには、音を楽しみながら、跳ぶ・支える・転がる・バランスを取るといった動きを経験できる良さがあります。 「かめは、どこを使っているの?」「転びにくい体につながるの?」。そんな疑問に答えながら、保育で親しまれている10種類の動きと、初めて取り入れるときの手順を紹介します。各項目から、曲や動きの参考動画を開けます。
リズム遊びはどこから来たのか
リズム遊びは、歌や音楽、手拍子などに合わせて体を動かす遊びの広い呼び名です。そのなかで、かめ・うさぎ・こうまなどを組み合わせる実践として知られているのが「さくら・さくらんぼのリズム遊び」です。
これは、さくら・さくらんぼ保育園などを創設した斎藤公子さんが、保育の実践を通して育ててきたもの。1956年に埼玉県深谷市で開いた「さくら幼児園」から続く実践です。園での暮らしや遊びの一部として受け継がれ、書籍や映像、保育者の研修を通じて広がっています。斎藤公子の略歴と教材の公式案内
一方、リトミックには、20世紀初頭に音楽教育家エミール・ジャック=ダルクローズが創案した教育法という背景があります。音と動きを結び付ける共通点はありますが、すべてのリズム遊びを同じ指導体系として扱うと、曲名や動きが混ざってしまいます。リトミック研究センターの解説
教材では、金魚・どんぐり・両生類ハイハイが基本の動きとして紹介され、跳ぶ・走る動きや、二人組・集団の遊びへ広がります。動物の名前は、子どもが動きを思い浮かべる手がかりにもなります。
園によって呼び名・伴奏・進め方にも違いがあります。この記事の手順は、主に3〜5歳児が無理なく参加するための導入例です。伝承されている動作や介助を本格的に学ぶときは、原著・解説書と実技研修で確かめましょう。
なぜリズム遊びが体や育ちに良いのか
いろいろな体の使い方を経験できる
両足で跳ぶときには、踏み切りと着地のタイミングを合わせます。四つばいでは、手足で体を支えながら重さを移します。片足で止まるときには、傾きに合わせて姿勢を調整します。曲を変えるだけで、違った動きを行き来できるのがリズム遊びの取り入れやすさです。
文部科学省の幼児期運動指針も、幼児がさまざまな遊びのなかで多様な動きを経験することを重視しています。リズム遊びに加え、戸外遊びやボール遊び、登る・くぐる遊びも組み合わせましょう。幼児期運動指針
聞くことと動くことがつながる
音が鳴ったら動き、音が変わったら速さを変え、終わったら止まる。「聞いてから動きを選ぶ」経験を、遊びのなかで重ねられます。音にぴったり合わせることを急がず、気づいて動こうとした姿を受け止めてください。
音楽を用いた運動プログラムでは、4〜6歳児の跳躍や動的バランスの改善を報告した研究があります。ただし、そこで調べられたプログラムと、この記事の10種類は同一ではありません。個々の動きに特定の発達効果が証明されている、という意味ではありません。Zachopoulouらの研究(2004年)
表現や友だちとのやりとりも生まれる
「小さいうさぎ」「ゆっくり泳ぐ金魚」と想像したり、友だちの動きを見て一緒に始めたり。体を動かす活動のなかに、見立てや表現、相手に合わせる経験も入っています。保育所保育指針解説でも、子どもが音や音楽で遊び、表現する楽しさを味わうことが大切にされています。保育所保育指針解説
転びにくい体になるのか
止まる、踏ん張る、姿勢を立て直す、周囲を見て進む。こうした動きを幅広く経験することは、日常の身のこなしの土台を育てるうえで大切です。
ただし、「かめをすれば転ばない」「リズム遊びだけで転倒を予防できる」とは言えません。上の研究も転倒件数を調べたものではなく、床や靴、疲れ、その子の発達なども転びやすさに関わります。保護者には「いろいろな動きを通して、自分の体を調整する経験を重ねています」と伝えると、ねらいが具体的になります。
始める前に整えること
- 床の濡れ、滑り、段差、落ちている物を確認し、家具や壁から離れます。寝転がる場所と走る場所は分けます。
- 手を広げてもぶつからず、転がる先にも人がいない間隔を取ります。人数が多ければ小集団に分け、進む方向をそろえます。
- 裸足が向く床もありますが、裸足を一律に必須にしません。床の状態、足の傷、装具や医療上の指示を優先します。滑る靴下のままの活動は避けます。
- 服装と室温を整え、水分補給や休憩を挟みます。痛み、強い息切れ、めまい、顔色の変化があれば中止します。
- 大人が背中を押す、脚や腕を引く、首を反らせるなどして形を作りません。本人が楽に動かせる範囲にします。
音量を小さくする、見通しを絵で示す、座って手だけで参加する方法もあります。見る・聴く・途中から入ることも参加です。けがや持病、運動上の配慮がある場合は、保護者と必要な専門職に確認して内容を選びます。
年齢は選び方の目安にとどめましょう。0〜2歳児は、歌に合わせて体を揺らすなど、その子がすでに自分でできる動きから。幼児向けの姿勢を大人が作って行わせたり、発達を早めるために練習させたりする必要はありません。
1 うさぎ
目安:両足で小さく跳ぶことを楽しみ始めた頃から。3〜5歳児も、跳ばない参加から始められます。
遊び方の例
- 自分の場所で立ち、腕や肩を楽にします。
- 膝を軽く曲げ、音に合わせて小さく跳びます。両足で着地し、膝をやわらかく使います。
- 短く跳んだら止まり、足を床につけて休みます。
経験できること:踏み切りと着地、左右の脚や足首・膝を組み合わせること、動く・止まるの切り替え。
ひと工夫:「足音を小さくしてみよう」と誘うと、高さを競わずに着地へ気持ちを向けられます。まだ跳びにくい子は、膝の曲げ伸ばしや足踏みでうさぎを表しても十分です。
2 かめ
目安:うつ伏せを苦痛なく保ち、自分で膝を曲げられる幼児。年齢だけで一律に取り入れません。
かめは、うつ伏せで膝を曲げ、足首付近を手で持ち、胸や脚を持ち上げる形として知られています。背中を大きく反らせることを目標にしないのが大切です。
遊び方の例
- 顔の周りを空けてうつ伏せになり、ゆっくり膝を曲げてみます。
- 無理なく届く子だけ、自分で足首付近に手を添えます。届かなければ、手を床に置いたままで構いません。
- 自分でできる範囲だけ胸をわずかに起こし、すぐ楽な姿勢に戻ります。息を止めず、長く保たせません。
経験できること:背中側を使って上体を起こすこと、自分の手足の位置を感じながら動くこと。姿勢改善や転倒予防の効果を、この一動作だけに期待するものではありません。
ひと工夫:足を持たず、前腕を床につけて前の景色を見る導入でも遊べます。腰や首を反らせるのが苦手な子は別の遊びに替え、介助が必要な形は実技研修で学んでからにします。
3 こうま
目安:自分で四つばいになり、手足で体を支えられる子から。
遊び方の例
- 手のひらと膝を床につけます。
- 保育者の少し後ろを、手と膝を順に動かしてゆっくり進みます。
- 慣れた子は、短い距離だけ膝を床から離す高ばいに挑戦します。
経験できること:腕・脚・胴体(体幹)で体を支えること、移動しながら重さを移すこと、手足を組み合わせること。
ひと工夫:「向こうの草を食べに行こう」と短い行き先を作ります。高ばいは発展形です。膝を無理に伸ばしたり、顔を強く上に向けたりせず、四つばいを楽しめればそのままで構いません。
4 どんぐり
目安:自分で寝返りができ、横に転がることを楽しめる子から。
遊び方の例
- 一人分の転がる道を確保し、床に寝転がります。
- 手足を楽に伸ばし、体を横へゆっくり転がします。
- 短い距離で止まり、落ち着いてから反対向きにも試します。
経験できること:寝ている体の向きを変えること、肩や胴体、脚の動きをつなぐこと。
ひと工夫:「小さい坂をころん」と、初めは半回転でも楽しめます。速さや回転数を競わず、大人が転がしてあげることもしません。気分が悪くなったらすぐ休みます。
5 金魚
目安:自分で寝転がれ、ゆっくりした揺れを心地よく感じる子。幼児が自分で動く導入例です。
遊び方の例
- 仰向けで寝転がり、手足を楽に広げます。
- 金魚の尾を思い浮かべ、お尻や脚を自分で小さく左右に動かします。
- 動きを止め、楽に休みます。
経験できること:ゆっくり動かすことと休むこと、自分にとって心地よい動きの大きさを探すこと。
ひと工夫:床に寝るのが苦手なら、座って手を尾びれのように揺らしても遊べます。動画には別の姿勢が含まれる場合がありますが、乳児の体を揺さぶる方法としてまねせず、本人が動く導入から始めましょう。
6 両生類のハイハイ・わに
目安:自分でうつ伏せから這って進める子から。呼び名は園によって異なります。
遊び方の例
- 清潔で滑りすぎない床にうつ伏せになります。
- 肘や膝を曲げ、手足を使って少しずつ前へ進みます。
- 短い距離で止まり、座るなど楽な姿勢に戻ります。
経験できること:床を押して進む感覚、左右の手足や胴体を使うこと、低い姿勢で移動すること。
ひと工夫:「川の向こうまで」と短い道を作ります。伝承される手足の組み合わせを教える場合も、まず大人が見せ、子どもが試すのを待ちます。腕や脚をつかんで動かしたり、腰を床に押し付けたりしません。
7 とんぼ
目安:歩いて止まることができる頃から。片足のポーズは、できる子の発展形に。
遊び方の例
- 両腕を横に広げ、決めた方向へ歩きます。
- 音の終わりに合わせて、まず両足で止まります。
- 慣れたら、止まってから片足を少し浮かせ、とんぼの姿を楽しみます。
経験できること:移動から静止への切り替え、姿勢の調整、片脚に体重を乗せること。
ひと工夫:「どの葉っぱに止まろう?」と想像してみます。後ろ脚を高く上げたり、長く片足で耐えたりする必要はありません。最初から走って急停止する形にせず、歩く速さから始めます。
8 めだか
目安:周りを見ながら、同じ方向へ歩いて進める子から。
遊び方の例
- 両手を体の前で合わせるなど、魚の形を作ります。
- 保育者の後ろを同じ方向へ進みます。初めは歩き、間隔を保てたら小走りにします。
- 合図で速さを落とし、めだかのお話の時間にします。
経験できること:腕の形を保ちながら移動すること、進む方向や友だちとの距離を調整すること。
ひと工夫:集まる場面では一か所へ駆け込ませず、数人ずつの小さな池に分かれます。腕を伸ばすことに夢中で前が見えなくなるときは、手を低い位置にします。
9 あひる
目安:自分で安定してしゃがみ、立ち上がれる幼児。低い姿勢で歩く型は、保育者が研修で動きと負担を確かめてから取り入れます。
遊び方の例
- まず立ったまま、両腕を体の横に下ろしてあひるの羽を表します。
- 慣れている子は、楽な深さまで自分でしゃがみます。
- 安定して動ける場合だけ、小さく一、二歩進み、立って休みます。
経験できること:低い姿勢で体を支えること、左右の脚へ重さを移すこと、姿勢を保ちながら進むこと。
ひと工夫:初めての子は立ったまま小さな歩幅で「あひるの散歩」を楽しみます。深くしゃがむ、かかとを上げる、長い距離を歩くことを全員には求めません。膝や足首が痛むときは行わないでください。
10 おふね
目安:自分で安定して座れ、揺れる動きを楽しめる子から。
遊び方の例
- 一人で楽に座り、両手を前へ出して船をこぐまねをします。
- 音に合わせ、上体を小さく前後に動かします。
- 慣れたら友だちと向かい合い、手をつながず同じ速さでこいでみます。
経験できること:座った姿勢で体を支えること、揺れの大きさを調整すること、相手の動きを見ること。
ひと工夫:「大きな波、小さな波」と想像を広げます。二人で手をつなぐ型に進む場合も、相手を引っ張って倒す遊びにはしません。脚を広げる幅や前屈の深さをそろえず、一人でこぐ形をいつでも選べるようにします。
初めてなら短い組み合わせから
10種類を一度に行う必要はありません。例えば、少人数で「歩いてみる→こうま→うさぎ→とんぼ→座っておふね」とつなげると、支える・跳ぶ・止まる・座る動きを組み合わせられます。初回は5〜10分程度の短い例から、子どもの疲れや興味に合わせて切り上げましょう。
伝承されているリズムの順番を学ぶことにも意味がありますが、現場では床の安全、人数、その日の体調を先に考えます。ピアノが弾けない日は歌や手拍子でも始められます。録音を使うときも、子どもを曲の速さへ無理に合わせず、止めて説明・休憩できるようにしておきます。
幼児期運動指針が示す3〜6歳の「毎日、合計60分以上」は、生活全体で楽しく体を動かす時間の目安です。リズム遊びを60分続ける意味ではありません。文部科学省のガイドブック
保育者が見ておきたい子どもの姿
活動中は、こんな姿にも目を向けてみましょう。
- 自分からやってみたくなったか
- 止まったあと、慌てず次の動きに移れたか
- 力が入りすぎず、呼吸しながら動けていたか
- 友だちとの距離や、進む先に気づけたか
- 苦手なときに休む、別の動きを選ぶことができたか
参加しない日には、音量、混雑、床の感触、動きの難しさも見直します。一つの姿勢ができないことだけで、発達の問題を判断しないでください。痛みや動きづらさなどが続くときは、普段の生活の様子も確かめ、保護者や必要な専門職と相談します。
本やCDで曲と動きを確かめたいとき
PR 書籍・CDの購入案内
動きの手順をイラストで学びたい人に
『イラスト版 斎藤公子 さくら・さくらんぼリズム遊び』 前田綾子・富岡美織 編著/ISBN 9784811841311
金魚、どんぐり、両生類ハイハイ、うさぎ、めだか、こうま、あひる、かめ、とんぼ、おふねはぎっちらこなどを掲載。動作の流れや援助の考え方を、図と説明で確認したいときに向いています。
ピアノ伴奏を準備したい人に
『楽譜集 斎藤公子さくらんぼリズム87』 藤原圭子・藤石芽里 編著/Kフリーダム/ISBN 9784911255063
上のイラスト版と合わせて使える伴奏譜です。この記事で扱った動きに対応する曲目があり、終わりの合図も掲載されています。リング式製本なので、ピアノの譜面台で開いて使いたい人の選択肢になります。
CDと一緒に遊びの幅を広げたい人に
CDブック『クラスでうたうこどものうた リズムあそび曲集』 井上伸子 監修/音楽センター/商品番号 CDK009/ISBN 9784900344549
「とんぼのめがね」の歌入り・カラオケを収録。「ギャロップでおどろう」「糸ぐるま」などにも遊びを広げたいときに使えます。全10種類の音源集ではありません。欲しい曲は公式の収録一覧で確かめてください。
動画と参考資料について
動画は、園の実践動画と保育士本人のピアノ演奏に分けて紹介しています。ピアノ演奏は伴奏の参考です。リンク先の題名・投稿者は確認していますが、音声と動作全編の再生確認はできていません。本文は初心者向けに動きを小さくしたり、停止方法を変えたりした導入例を含むため、動画と同じ完成形を求めるものではありません。保育者が活動前に映像・音量・広告表示を確認し、子どもに合う部分を選んでください。歌詞全文・楽譜・映像の転載はしていません。
動きと実践の参考:しらゆり保育園、厚木市公立保育所情報紙第16号、ニチイキッズ泉南保育園の実践、同心保育園の実践、こども家庭庁のふねこぎの実践例。由来・運動・表現に関する資料は本文中に記載しています。リンク・資料確認:2026年10月6日。
全記事一覧